2010年4月19日月曜日

オックスフォード・リーディング・ツリーを手放す時 (1年生11月)

  渡米して3ヶ月経ったころ、娘が部屋にあるオックスフォード・リーディング・ツリーの本を見て、
  「これ、誰かにあげようよ」
  と言いだした。

 ちょっーっと待ったー!
 
 娘は、自分が使わなくなったものは誰かにあげたい、お友達に贈り物をするのも大好きなプレゼント魔である。しかーし、そこらの古着とオックスフォード・リーディング・ツリー(以下、ORT)を一緒にするでない!あのORTを! 



 ORTはイギリスでの小学校の教科書と聞くし、どこか関東のイマージョン教育を行っている小学校でも、これを教科書として使っているそうだし、何よりも日本にいた頃、自分のお小遣いを削ってこつこつ Stage 7 まで買い揃えた気合の入った代物である。もう少しこの子達を手元に置いておきたい。イラストだって、めちゃくちゃイケてるじゃないか。
 確か日本にいた頃は、6冊ずつ小出しにして大事に大事に読ませてきた。娘はアメリカに来る前、Stage7 までは読み終えていなかったはず。そこで、娘にStage 7 の more stories を読むよう促してみた。が、

「何これ、簡単すぎ~! オーホ

高笑いである。
 
 渡米して3ヶ月だ。これを日本にいた時の私の努力の賜物だと言わずして何と言おうか。

 いや、言い方を変えよう。恐らく日本にいたころ、娘は既に Stage 7 くらいは読めていたのだと思う。だって、実際、文も短い。なのに、あまりにも遠慮がちに進めすぎた。これはまだ難しいかなと思ったり、段階的にとか考えたりする。それは、恐らく英語育児を特別視し、慎重になっていたからだと思うが、英語育児に限らず、わが子を過小評価していることって実は多々あると思う。背伸びすれば背が伸びるってこともある。

 しかし、わが子ゆえに評価するのが難しいのも事実だろう。
 背伸びさせすぎて、ふらつく姿も見たくない。
 そんな時、こんなものが助けになるかもしれない。

  http://www.lexile.com/fab/

 アメリカのMeta Metrics社によるレクサイル指数
 英語教育に携わっている人はご存知かもしれないが、全米の小学校~高校生の半数以上が利用していると言われている読書の目安になる指数である。難易度別に0L~1700L くらいが設けてあり、例えば、ハリー・ポッターシリーズだと880L からある( L は単位で、Lexile の L だと思われる)。ただし、BR は Begining Reader の訳で 0L 以下のことであり、これらの本は大人が読み聞かせしてあげた方がいい場合がある。

 具体的な使い方だが、特定の本があって、どれくらいの難易度か調べたい時は、単純に右側の”look up a Book"”Title" 欄に著書名を入力して検索すればいい。例えば、Harry Potter を入力すると、9冊くらいが検索されるが、レクサイル指数にばらつきがある。それを指数の少ない順(つまり簡単な順)に並び替えるには、Sorting” の所を"Lexile Measure"にすると可能である。

 ちなみに、このレクサイル指数、何を基準に決められているかと言うと、語彙の頻出度文の長さの2点だそうだ。"ages:8 and up” (8歳以上対象)とかあるが、年齢基準はあくまでも参考程度にしたらいい。Lexile が最も否定しているのは、日本でよく表記されているような、例えば ”小学二年生以上” といった学年による表示らしい。学年をベースにした指数は、あくまでも全国テストでのその学年の平均点を基準にしているからダメだと言うのだ。同学年でも生徒間に能力の差があるから、というのが理由なのだが、ここら辺が実に欧米的である。

 Lexile のポリシーを詳しく知りたい方は、上部 ”About Lexile Mesures" の中の "What is a Lexile Mesure?" を読んで頂きたい。そこには、具体的な指数に固執せず、例えば800L であれば、下 100 (700L) から上 50(850L) をその子の sweet spot (コア部分。守備範囲)だと思えとか、レクサイル指数は本を選択する際の一つの判断基準ではあるが、その他にも読者の興味の対象なども同時に考慮しなくてはいけない等と書かれている。
 
 この”読者の興味の対象”というとこ、好きだ!こういうこと書いてくれると信憑性が増すというもの。
 私などは、子供の興味のあるジャンルをとことん読ませたいタイプだが、もしフィクションばかり読んでいるから同レベルの伝記などを読ませてみたいと思ったら、先ほどの "Find the riht Book for YOU" のページの ”I don't know my Lexile measure ” のところで、学年を入れ、クラスの中で読んでる本の難易度を自己診断して進むめば、”What kinds of books do you like?” と聞かれる。そこで、”Biography"(伝記)などと入れてサーチすれば、同レベルでの伝記の本が検索される。そして、得意なジャンルとは違うカテゴリーの本だから、少し指数を下げたものからスタートさせてみようとか、判断したりすることが出来るのだ。
 一方、一度自分のレクサイル指数が分かれば、My Lexile measure is” の欄を利用すれば良い。
 
 娘の小学校では 3rd Grade になると、読解に関するテストをパソコンで行って(クイズ形式で楽しいらしい) レクサイル指数を判定し、教師がそれに沿って生徒に宿題で出すリーディングの本を決めているという。これを 2nd Grade からやっている担任の先生もいる。

 驚くべきことは、宿題として先生から渡される本がクラスの中でひとりひとり違うということだ。これはあくまでも想像だが、先生は、ある程度のレクサイルの数値幅を持たせて一度に20冊ほど本を調達し、それをクラス内でのリーディング熟度別グループ(1st Grade の時は5グループあった)毎に振り分けて、同じグループ内の子たちにその同じレベルの本何冊かを回し読みさせているのではないかと思う。
 言い換えると、自分のレベルに合った国語の教科書が何冊かあって、ひとりひとりがその時に使っている教科書が違うようなもので、先生はさぞかし大忙しだろう。アメリカの学校教育がどれほどリーディングに心尽くしているかよく分かる。何せ先生達ったら、リーディングさえしていれば語彙はもちろん、スペリング能力Writing強化で交換日記投入ご参照)さえも何とかなると思ってんだから。(あ、言っちゃった!)

 個人的にレクサイルの一番いい点は、誰と比較することなく、一度自分の指数が分かれば、その上を目指して読書力を伸ばしていけることだと思う。つまり、自分の中での絶対評価が可能なのである。
 そしてそして、なんと検索された本の横のWorldCat のタグから、その本が自宅周辺のどの図書館で借りられるのか、調べることだって出来る。日本でも和書で、膨大なデータベースを駆使して、このようなシステムをぜひ構築して欲しい!

 以上、レクサイル指数をプッシュしまくったが、現実問題、日本で英語を勉強している子供たちがネイティブと同じ物さし、という訳にはやはりいかないのだろうと思う。参考までに下にキッズブックスというところでの、レクサイル指数と日本の学年との比較表を載せておく。
http://kidsbks.co.jp/?mode=f3

 私はこの表で、日本の中1の英語学習がネイティブの小学1年生レベルであるのを見て、ちょっとしたショックを受けた。幼い頃からの家庭内国産バイリンガル計画、やはり必要なんじゃないかな。
 
 また、私がレクサイル指数を知る前には、こんな本を参考にしていた。この本では、日本人学習者にとっての読みやすさ基準というものを独自に設けている。レクサイルでは ORT をサーチにかけても出ては来ないが、(何せイギリス系だし、アメリカでは殆どORTを知る人はいない)、この本ではしっかりページを割いて紹介されている。



 そういえば、その後、ORT を生かす道を見つけた。
 ORTは、今では Stage10 あたりまで出版されているのだろうか?でも、もう今後、そこまで買い揃えることはないと思う。が、手持ちの Stage7 までを使って、一冊一冊、娘に要約のスピーチ(解説)をしてもらうという方法を思いつた。

 確か1st Gradeのこの頃、つまり8月末に新学年が始まって3ヶ月経った11月のある日、先生から、「宿題で渡しているリーディングの本について、毎週金曜日、個別に質疑応答の時間を設けようと思う」という話があった。先生は、「大丈夫、大丈夫、質疑応答ったって、私が、登場人物の名前を聞いたり、メインキャラクターが誰か聞くくらいだから。あとは、その子が最後にどう変わったか聞いてみるだけだから」って言っていたが、
 ”~だけ”って、なに?!
 ”その子が最後にどう変わったか”なんて、本の要約もいいとこじゃないかっ!
 て思ったものだ。。

 そして、娘は今 2nd Grade も終わりを迎えようとしている。2 年生の締めくくりとして、ORT のサマリーをやるというのは、うん、確かにいいアイディアだ。(はい、実にそのアイディアを思いついてから、1年もの年月が流れました)

 そして、サマリーをやらせた後、その後は・・・。いつかは、この子たちを手放す日が来るのだろうか・・・。一抹の寂しさを覚えずにはいられない。
 ORTでこんなだから、ワールド・ファミリーを嫁がせる際にはどうなることやら・・・。

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